nokatachi

2025/11/19 17:39



山菜が一通り出終わり、山の湿度に夏の気配が混ざり始める頃、畑にご飯が用意された。
いつもオンラインで会っている多田さんと稲垣さんが、大阪から遊びに来てくれた日だ。

写真は多田さんが撮ってくれたもので、並んだ料理はすべて母が整えてくれたものだ。草と土の匂いがただようこの場所は、田んぼに囲まれ、その奥には集落がぽつぽつと点在している。山の移ろいが四方から迫り、アスパラガス畑の隣には、ナスやトマトなどの苗が丁寧に植えられていた。

食卓には、この時期に採れる赤ミズの汁物が並ぶ。赤ミズは表皮が繊維質なので、茎を折り、残った表皮だけを丁寧に剥いていく。山形といえば玉コンで、イカを加えて煮付け、辛子を添えて食べるのが定番だ。
ニシンの昆布巻きは爪楊枝で留めているが、祖母の頃は干瓢を使っていた。長く煮付けた昆布は箸でほぐれるほど柔らかい。わらびの一本漬けも、山から採ってきたものを食べやすい大きさに切ったもので、それにぴったり合う蓋付きの小皿が、食器棚にきちんと用意されている。

おこわに添えられた葉野菜は、近所の方がたまたま持ってきてくれた頂き物。紫蘇巻きは、味噌・砂糖・胡桃を混ぜたものを揚げて作る品で、作り手の甘さの加減がよくわかる。スーパーで買うと甘いものに当たることが多いが、今日はアスパラガスの納品先(道の駅)で知り合った方が作った、ちょうど良い甘さの紫蘇巻き。笹巻きも同じ方のもので、地域特有の巻き方があるが、これはよく見かける一般的な巻き方のものだ。

皿の一つは、畑で揚げるアスパラガスの天ぷらを盛り付けるために空けてある。
おこわには、筍・人参・椎茸・油揚げ・鶏肉が入り、味は少し濃いめ。具材は小さく切られていて、握りやすく食べやすい。椎茸は冬に椎茸農家さんから頂いたものを干して保存していたもの、筍は春に水煮の瓶詰めで頂いたものをそのまま取っておいたものだ。


ご馳走というものは、どうやら「集まってくるモノ」らしい。正確には集まってくると錯覚できる態度を取り続けられることでもある。態度を取り続けることでそれは作法になり、モノが集まる時期はそれぞれ違っても、その時間を引き延ばす保存の技術ができる。そして、日頃のモノの分け合いや贈り物のやり取りによって、モノが行き交う瞬間がいたるところで生まれる。その積み重ねに応じて、モノや人同士の距離の取り方にも技術が宿り、そこに郷土の料理というものが形づくられていくようだ。