nokatachi

2024/09/15 09:16






ここらの守り神、六社明神。
年に一度、旧暦の八月十三日になると、若い人たちが神さまを連れて各家をまわってくれる。昔からの習わし。

「今年も来てくれたか」と、玄関を掃き、水拭きし、乾拭きして、空気ごと清める。
この空間に神さまが入ってこられるように。

祖母は言っていた。
「この日ちゃんと迎えると、一年間、家を守ってくれるんだよ」と。

神も仏も、死者も、ぜんぶ一緒に「守ってくれるもの」として在る、そんな土地の感覚。
母も祖母も、特別な区別なく、自然とそう感じていたようだ。

お迎えはほんの数分。
朝8時ごろ、玄関を開け放ち、窓も全開にする。
こちらで用意した酒器にお神酒を注いでもらい、一口いただいて、お札をいただく。
小さなやりとり。でも、その場に気が満ちる。

祖母は毎年、亡くなった人の写真を持って出迎えていた。
「だって、見せたいべ?」と笑いながら。
神さまも、仏さまも、あの世の家族も、みんな迎える日。

手を合わせる。
向き合うというより、ひらく。
そんな小さな所作のなかに、いつのまにか、気が流れてくる。
母曰く、「小さいときからそうしてたよ。婆さんが、そうやってたから」。何気ない郷土の一コマだった。